Better than nothing夫婦

米国ナーシングホーム勤務女性の毎日のあれこれ

フットボールの好きなロニー(1)

ロニーは80歳半ばの背の高いお爺ちゃんだ。私が最初に会ったのは3年前「季節」の住人のだった。ストローク(脳溢血)の後遺症で、言葉があまりで出てこず、右手が不自由なので、一日中合う人ごとにハウ・アー・ユーと会う度に誰にでも声をかける。普通この挨拶は10分後に又会った場合避けるので、何故彼はこの表現を繰り返すのかと思っていたが、どうもこれ以外の言葉が出てこず、結果これを繰り返しているらしいとわかったので、それ以後は、毎回ファインと答えることにした。

 

季節では、お世話焼きのスージーが彼に代わって、食事のメニューのオーダーから、好きなフットボールの観戦用のチーズ、ビールのオーダーまで世話を焼くので、夫婦なのかと思っていたら、ずっと前からの友達だと説明された。それぞれ配偶者を亡くして同じ施設の「季節」に落ち着いた訳だ。

 

食事のメニューオーダーは、いつも、利き腕の右手が麻痺して、記入できない彼のために、オ一々確かめながらスージーが書いてあげる。普通朝食は全粒小麦粉パン2枚にバターとジャムをつけ、果物、ミルク、オレンジジュース、ベーコンかソーセージ、スクランブルエッグと決まっていて、時々、パンがインングリッシュ・マフィンになったり、ドーナッツになったりする。お昼はハンバーガー以外の時は殆ど抜きだった。朝の食事量が多いので、十分だったのだろう。

 

そういう状態が2年ちょっと続き、去年の冬の初めの11月ごろから食欲がみるみる落ちて来た。朝に同じ物を用意しても、食べ残す。スージーが心配して色々と「あれは、これは」と言っても食べたがらない。そのうち何もいらないというようになり、病院にも連れて行かれたが、改善せず、1月の初めには住居を「野原」に移ることになった。